#6 旅のしおりは宴への誘い




それから暫し後、晴子たち6人は論悟が手配したヘリの中にいた。

ちなみにヘリの操縦を務めているのは件のセバスチン=長谷川(52才、独身)。
曰く、フランス人とドイツ人のハーフである母を持ち、
そしてアメリカ人と日本人のハーフを父に持つという
なんか妙にややこしい血筋である彼は、
所々白髪混じりの黒髪を後ろへなでつけ、
タキシードのよく似合う落ち着いた感じのナイスミドルである。

「さて、エブリバディ」
不意に論悟が口を開くと、
それまで窓から眼下の景色を楽しんでいた一同は
一斉に視線を論悟へと集中させた。

「これから血沸き肉踊る魂の祭典、
『闇バーベキュー』を執り行うわけだが・・・
その前に必要不可欠なものを用意せねばならない。
それはなんだか・・・わかるかい、ハル?」
突然話を振られ、焦りまくる晴子。
「え・・・ええっと・・・、食材・・・ですか?」
「ザッツライッ! 食べるものを用意しなければ
バーベキューもヘッタクレもないわけだ!
そこで、まずは食材の調達から始める!」

そして操縦席のセバスチンへと視線を向ける。
「セバスチン、例の場所まで後どれくらいかかる?」
「おおよそ、十分前後でございます」
「ふむ・・・」
論悟は一つ唸ると手元のバッグからなにやら本を取り出し、
それを晴子たち全員に配った。

皆の手に渡るたび「おおっ!」だの「ほお・・・」だのと声が上がり、
自分にも手渡された『ソレ』を晴子はまじまじと観察した。

B5ほどの大きさの割にはずっしりとした質感。
その拍子にはこうタイトルが打たれていた。
『今夜は闇バーベキューでオールナイト!☆〜旅のしおり〜』
(てゆーか・・・タイトル名もツッコミどころ満載だけど・・・
なんでハードカバーの上に金箔縁押しエンボス加工・・・)
「うむうむ、やはりこれがなくては始まりませんなぁ!」
心中げっそりとため息をつくハルの隣で
おもちゃを手に入れた子供のように無邪気に笑うクロロ。

「さて、これより諸君には宴のための食料を調達してもらう。
だがその前にいくつか注意点を挙げておこう。
しおりの3ページを開いてくれ」
言われるままに晴子達はしおりのページをめくった。
そこには『☆魂の饗宴・3つのおきて☆』と
重厚なんだか軽薄なんだかよくわからないタイトルが綴られており、
その下には3つの文が箇条書きで記されていた。

全員がページに一通り目を通し終わったであろうそのとき、
「一つ、食えざるもの焼くべからず!」
論悟は文の一つを読み上げた。
「よく漫画などで長靴や靴下を入れる愚か者がいるが、
こんなもので我らの魂が奮い立つ訳がない!よって却下とする!」
その言葉に「当然だな」、「美しくありませんものね」と頷く日暮と鮮華。
更に論語の言葉は続く。
「一つ、溶けるもの焼くべからず!
焼くのは箸でつかめるものとする!」 
「じゃあ、ドライアイスはダメですねぇ」
「入れようとしてたんですかっ!?」
残念そうに呟くアユムに即座にツッコむ晴子。
ちなみにアユムはまだ紙袋をかぶったままである。
「そして最後に・・・
一つ、食材は己の魂の叫びにしたがって選ぶべし!!」
「うおっっしゃぁぁぁぁっ!!」
キメとばかりに叩きつけられた論語の言葉に、
対抗するが如きのクロロの雄叫び。もちろん意味などない。

そんな、焼く前から既に魂の饗宴状態なヘリの座席に
操縦席からセバスチンの落ち着いた声が届く。
「皆様、そろそろ目的地に到着いたします」
「わかった」
論語は操縦席のほうを伺ってそう返事すると
再び晴子たちの方に視線を向けた。
「聞いてのとおり、間もなく我らの魂を磨き上げる場に到着する。
ちなみに手に入れた食材はセバスチンに渡すように。
それと、調達をしながらしおりにも一通り目を通しておいてくれ」
論語がそう話す間にヘリは目的地に到着したらしく、
着地したときの軽い衝撃が晴子達に伝わってきた。

「さあいこうか、エブリバディ!!」
叫びつつ論語はヘリの扉を勢いよく開けた。
晴子達の眼前に広がったソレは・・・
巨大なショッピングモールだった。




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