とにかく、後で何かを言われない為に『ひねった物』を手に入れようと判断し、
晴子は鮮華と別れ、食品売り場をあてもなく歩き出した。
ネギが邪魔だった。
それを頭の奥に押し込み、考える。
「バーベキュー…だから、やっぱりー…」
連想ゲームの要領で必要かと思われる物を考える。答はすぐに出た。
「お肉だ」
幸い、辺りを見回してすぐにそれは見つかった。肉売り場。
一体どんな肉があるのやら、
晴子はごくりと息を飲みながら端から売り場を眺めた。
左から
『牛肉』
『豚肉』
『鳥肉』
「……普通だなぁ」
少しがっかりした声で呟く。しかし、鳥肉から視線を右へと移したその瞬間、
晴子は無表情のまま固まった。
『アレの肉』
晴子が我に返ったのは2パック程カゴに入れてしまってからであった。
「!! ちょっと待って私! 落ち着いて私! アレって何よ!!」
答えてくれる人がいない事位分かっている。でも声に出したかった。
売り場に戻そうにも、好奇心には勝てずにいる自分がいる。
「だって、普通すぎると何か言われるだろうしだろうしダヨネイイヨネ!」
再びカタカナ変換が始まってしまった。今度は、自分に言い聞かせる為だ。
晴子はそのまま(カゴに"アレ"を入れたまま)
逃げるように肉売り場を後にした。
「タレとか誰も買ってなかったらどうしよう」
暫くして、晴子はふと呟いた。
変な所で気を使っている気もしたが、少なくとも自分はタレが無いと食べられない。
一応買っておく事にした。
決して他の食材を見るのが怖いから安全圏に逃げた訳じゃない。
「売り場はー…あ、あそこだ」
ぶら下がったプレートを目印に売り場へと向かう。
そこに先客がいたので晴子は一度足を止めた。先客とは、日暮だ。
「日暮さん」
「ああハルさん、調子はどうですか」
晴子に気付いた日暮は穏やかに笑った。しかし、そのカゴの中は怖い。
「………スゴイデスネ」
「え? だってバナナはお約束でしょう?」
それじゃないんですけど。と思ったが声には出さなかった。
それにしても日暮はバナナを焼くのか。
「えーと、日暮さんもタレ、買うんですか?」
「一応ね。ああハルさん、参考までにー…激辛173倍と激甘203倍、
どちらがお好みですか?」
「……………普通のが好きです」
「それじゃあつまらないじゃないですか。幸いこの2つは色が似てる、
ロシアンルーレットの要領で選べば盛り上がりますよ?」
明らかに怪しい2つの瓶をこちらに見えるように持ちながら日暮はさら
りと言った。やはり、この人もおかしい。
「ところでハルさん、その肉はー…」
カゴの中を覗き込むように日暮が尋ねてきた。晴子は言い辛そうに答える。
「だ、ダメですか…? 『アレの肉』らしいんですけど…」
「!!」
日暮の表情が変わる。
その後、何故か目元を押さえてクスクスと笑い出した。
「クックック…またお目にかかるとは、懐かしいですね、『アレ』」
「いや、分かりません」
「グッジョブですよハルさん、
新しく参加した貴方だからこそ選べる食材だそれは」
「………戻してきていいですか」
「いやいや、是非持っていくといいです。………はっはっは、『アレ』…」
晴子は、肩を震わせながら立ち去る日暮の背中を見送りながら、
アレを持ってきてしまった事を心底後悔した。
と、その時
『ピンポンパンポーン』
晴子の心中とは正反対のような陽気な呼び出し音がモール内に鳴り響いた。
『やぁ皆! 食材は揃ったかい? そろそろ集合だ!!』
声は、論悟のものであった。
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