拾弐.その他、忘れ得ぬ車両たち

 なんだかんだと主だった客車について書いてきたが、ここではこの時代と無関係ではないが、上では触れてこなかった車両をちょろちょろとふれていこうと思う。

 機関車・特にEF58について
 この時代、東海道を闊歩していた機関車といえば、旅客機ではEF58がほとんどで、他にEF53やEF56がぱらぱらといたに過ぎない。そう考えると機関車ではあまりバリエーションは楽しめないとも言えるが、EF58自体が割とバリエーションがあるので案外飽きないものである。細かい配置・転属や各車の特徴を記述するとそれだけで今までの量と同じくらいの紙面を必要としそうなので、その辺の実車データに関してはとりあえず「EF58ものがたり 下」(交友社発刊)を参考にしていただきたい。形態や配置・転属等、EF58の実車データに関してはこの1冊でほとんど事足りる。
 ということで、実車に関しての細かいことはさておき、模型の方に目を移してみるとさすがは花形機関車だけあってTOMIX・KATOから各種形態の完成品がわらわらと発売されている。また、ワールド工芸から旧型車体(箱型・デッキ付)、及びEF18のキットも発売されている。ところが、である。なんとしたことか今市場に出回っている製品の中で、そのまま無加工で使えるものというのが一つもないのである。かろうじてKATOの「3020-4 EF58初期型大窓 茶」がそのまま使えそうではあるのだが、困ったことにこいつには水切りがついていない。細かいことを書き出すときりがないので簡単に書いておくと、元々水切り無しで落成した車両も’57年までには全車取り付けられているのである。では、他の製品はどうなのかというと、今市場に出回っている他のタイプは全て屋根昇降段改造が行われた後の姿をプロトタイプとしている。要するに、乗務員扉脇に欠取りがあるタイプになっているのであるが、この改造が行われたのは’60年以降であり、時代的に少し合わないだけでなく、青大将塗色をまとったカマは全てこの欠取りはない。無論、同時代を生きた一般塗色車両にも欠取りはない。まぁ、細かいことにこだわらなければ無視してしまえばいいのだが、気になりだすととことん気になってくるものであり、私はいちいち埋めている。埋めるのだけでも面倒なのにそこにステップをつけなくてはならないのがまた面倒くさい。もう一つ上げておくと前面窓下の手すりも’61年以降取り付けなのでこの時代の車両にはついていない。これはちゃらっと削ってしまえばOKだが。この問題、一般車なら特に大事でもないのだが、こと60・61号機の話となると別である。この2両は周知のとおり車体の全長に渡ってステンレスの帯があるわけであり、当然この欠き取りの部分を埋めるといっても簡単にはいかない。一応現状でTOMIXから61号機が発売されているがご他聞にもれず見事に欠き取られている。この時代の61を忠実に再現しようとすると当然ここを埋めたいわけだが、帯がモールドされているから簡単にはいかない。こうなると、一般型をベースにして後から何らかの形で帯をつけたほうが楽そうではある。
 この機関車の印象を最も左右するのは何と言っても顔である。今更述べるほどのことでもないだろうが、まず前面窓の形態で大きく3つに分けられ(大窓・小窓・Hゴム支持窓)、その各々にツララきり(ひさし)の有無があり、都合大きく分けて6種類ということになる。元来東海道本線を走る車両にはツララきりは必要ないので製造後東海道関係区に配置された後、そのまま東海道にいついた車両にはツララきりはない(例外中の例外として29のみ、東京区にいながら’55にツララきりを取り付けられている。これは水切りの代用だったらしい)。この時代、東海道を走ったツララきりのついた車両というのは、新製後上越線関係の区(長岡第二・高崎第二)に配置された後、’56-11の東海道全線電化に際して東海道に流入してきたカマであり(具体的には7・35〜47)、これらは全て大窓車であった。よって、この時代の東海道では、小窓・Hゴム窓でツララきりというスタイルのカマはいなかったということになる。
 さて、模型へと目を転じると、現状ではツララきりつきの車両は全種Hゴム支持、小窓は現在は製品が存在せず、大窓は2社から、Hゴム支持車はTOMIXのみから、という状況になっている。小窓車もかつてKATOが出していたが、リニューアルの際には小窓車がラインナップに入らなかったのが残念である。一部では阿呆みたいなプレミア価格がついているのがいただけない。確かに小窓車が出ていないのは少々痛いが、各社大窓車から比較的簡単に改造できるので致命傷ではないだろう。ちなみに、大窓車と小窓車は、窓の上辺の位置は同じで、天地巾が約100mm違う。よって、N換算で0.7mmほど大窓車の前面窓下辺をかさ上げしてやればいいということになる。
 実車の観点からすると割とどうでもいいことといえばどうでもいいことなのだが、各社模型を見比べていて気づいたのが車体枕ばり端面形状の差異である。

 この61号は言うまでもなく日立製なのであるが、この端面の形状が長方形となっている。端面が長方形、というのは日立製のカマに特有のものであり、他のメーカーの車両は原則台形となっている(例外として、35・36は東芝製だが長方形となっている)。さて、各メーカーの製品を見てみると、TOMIXの製品は全てこの部分が長方形になっているのに対して、KATOの方は「上越形 ブルー・茶」は長方形だが「後期型大窓 ブルー」「初期型大窓 茶」は台形となっている。この辺の差を利用してやると、各製造メーカーのタイプが作り分けられる…のだが、まぁ、どうでも言いといえばどうでもいい話ではある。
 割とどうでもよくないのが、パンタグラフの話であろうか。この時代のゴハチのパンタはPS14かPS15(正確にはもう一つPS14Aが存在する)であり、その内訳は1〜85(含むEF18 32〜34)・91〜93・95〜97・99・112・113がPS14、残り172までPS15となっているのであるが、翻って製品のほうを見ると、PS15をつけているのがKATOの「上越形 ブルー・茶」及びTOMIXの「Hゴム窓 一般色・茶色」のみなのである。何が困ったって、この製品群、。この時代の東海道をモデる人間としては一番「使えない製品たち」なのである。せめてKATOがPS15をASSYパーツとしてある程度の安定供給をしてくれればかなり助かるのだが…。TOMIXのパンタのばら売りもあるにはあるが、やはり出来のいいKATOのパンタを使いたくなるのが人情というものであろう。
 全車の履歴、形態一覧を上げたいのは山々だが、そんなことをしたらかなり死にそうなのでとりあえず青大将塗色をまとったカマたちの形態・所属一覧を上げるにとどめる。

凡例
配置 東:東京機関区 宮:宮原機関区 高二:高崎第二機関区
メーカー 日:日立 芝:東芝 川:川崎車輌・川崎重工 東:東洋電機・汽車会社
配置は、青大将塗色になった当初の配置区を記している。
転属は、貸出については記載していない
番号配置ツララきりメーカー転属備考
37
57-10 高二/58-4 東京/59-12 高二 
38
  
41
  
44
  
45
 鋳鋼製先台車
46
58-4 東京 
47
58-4 東京 
49
 
  
52
 
  
55
 
  
57
 
 下り「青大将つばめ」1番列車牽引
58
 
 '58年初 前面Hゴム支持改造
59
 
  
63
 
  
64
 
  
66
 
  
68
 
  
70
 
  
86
 
  
89
 
 上り「青大将つばめ」1番列車牽引
90
 
  
95
 
  
99
 
  
100
 
  
140
 
 側ナンバー切抜き文字

 一応ごくごく大雑把な概要を書いてみたが、ここで個人的に気になる車輌を2両ほど。
 EF58といえば、今も残る61が余りにも有名だが、他にも予備機として60(東芝)が浜松区に配置され、少ない機会ながらも御召列車を牽引している。今までそのものずばりの製品は出ていない不遇のカマだけに、きちんとした作品を上げたらそれなりに受けるかもしれない。メーカーが東芝故に、やはりKATOの「初期型大窓 茶」をベースにして帯を別張りするのが一番手っ取り早いだろうか。
 また、あまりメジャーではないが、73号機(日立・小窓車)は東京機関区で御召予備機に指定されており、実際に御召列車を牽引した事は無いものの、東海道で御召列車が運転されるときは61号等と共に整備を受けていた。その関係上、’57-2の甲修の際に名札差が取り付けられ、手すり・区名標差等のメッキ塗装が施されていた。もちろん完全整備状態で運用についたことは無いだろうが、手すりや区名標差がメッキされている状態を再現してみたりしたら…どうだろう。ただ、ナンバープレートがパーツとして出ていないのが相当痛いが。
 もっと細かいところを書いてみたい気もするのだが、とりあえず「EF58ものがたり 下」を見れば実車データは出ているのでそれを見て研究するなり、あるいは他の書籍を参考にするなり、もしくは肩の力を抜いて製品をそのまま使うなり、「お気に召すまま」。
 付録として、私が個人的に使うために製作したデータをダウンロードできるようにしておく。興味がある方はダウンロードしてみていただきたい。

Microsoft Excel版

htm版(IEを強く推奨)

 御召列車
 平成の世になって、長い間御召列車も運転されていなかったのが96年10月に突如復活の運転、以来なんだかんだいって1年に1回程度の頻度で御召列車が運転されるようになったせいかどうかは知らないが、それまでわずかにワールド工芸が新1号編成を出していただけだったのが堰を切ったように3メーカーから4種の(新)1号編成と、1メーカーから2号・3号編成、おまけに14号御料車まで出るという何かおかしいんじゃないかと変な心配をしてしまうような状況に陥った。
 今、現役として走り回っている御料車は言わずと知れた「新1号編成」であるが、これは’60年10月が初使用であり、当然のごとく今話題にしている時代とは関係がない。用があるのは、「1号編成」及び2号御料車・14号御料車ということになる。この時代、東海道本線において運転された御召列車、及び御料車を利用した特別列車というのは意外に少ない。
年月日運転区間御料車機号運転理由備考
32.4.6
4.12
東京-岐阜1号61岐阜植樹祭 
蒲郡-東京60
32.10.25
10.29
10.30
東京-静岡1号61 第12回国体
(静岡)
 
浜松-富士60
沼津-東京不明
33.4.5原宿-神戸1号61大分植樹祭 
33.5.25
5.25
5.26
5.27
東京-小田原14号61イラン国皇帝
関西視察
編成:供462+14号+供401+供463
熱海-浜松61
浜松-岐阜61
名古屋-京都不明
33.9.29
10.1〜2
東京-京都14号61インド大統領
関西視察
編成:オロフ327+マロネ29114+スシ28151+マロネ4011+14号+マイフ971
大阪-東京61
33.10.27岐阜-東京1号不明第13回国体(富山) 
33.12.3〜4
12.5
東京-京都14号61フィリピン大統領
関西視察
編成:オロフ334+マロネ29114+マシ384+マロネ402+マロネ493+14号+マイフ971
大阪-東京61
34.4.17
4.19
東京-名古屋2号61皇太子ご成婚編成:供463+供335+2号+供344+供462
名古屋-原宿60
35.4.22東京-京都14号61ネパール国皇帝・皇后
関西視察
編成:オハニ3611+供344+マシ383+14号+マイテ3911
35.5.23
5.25
原宿-名古屋1号61 皇后日赤中部県連大会出席 
名古屋-原宿不明
1号編成:供461+供330+1号+供340+供460
 「運転区間」は、あくまで東海道本線内の運転区間で、全行程ではない。「機号」はEF58の機号である。’96年のベルギー国王特別列車の際には、日の丸とベルギー国旗が機関車に掲げられていたが、この時代の外国貴賓特別列車は国旗なしで運転された。
 さてさて、模型界ではどうなっているかというと、ワールド工芸から新1号編成が台車のみ別売りのトータルキットとして(ただし、目下絶版の可能性大)、キングスホビーから1号編成が同じく台車のみ別売りのトータルキットとして、マイクロエースから新1号編成と1号編成が完成品として、レボリューションファクトリーから1号編成・2号編成(3号つき これも目下品切れ)・14号(ただし、EPCブランド)がコンバージョンキットとして、それぞれ発売されている。また、恐ろしいことにKATOが「1号編成」の模型化を発表しているが、これは恐らく新1号編成であろう。さて、それぞれを見ていくと、どうも一長一短というか、なんとも言いがたい雰囲気が流れている。まず、この時代には関係ないものの、ワールド工芸の新1号だが、最新の製品がどうなっていたかは未確認だが、うちにあるロットは、供奉車の窓の天地幅が実車よりも狭いという致命的な設計ミスを犯してしまっている。続いて、キングスの1号編成はというと、これはまず金額がとってもいい金額であり(34000円がキットで、さらに台車代として5800円必要となる)、それでちゃんとした製品ならともかく、供奉車にリベットがついていないというよくわからんキットに仕上がっている。何を考えてリベットの表現を省略したのか、まったく持って理解に苦しむ。どうやらこのメーカーは、シングルルーフの車両にはリベットをつけない、という方針っぽいのだが、だからって何も実車についているリベットを省略しなくってもいいと思うのだが。まぁ、それはさておき、次にマイクロエースの製品だが、これは…なんというか、ぱっと見なんとなく全体の作りが甘い、と感じるのと(最近の完成品のようなきれが感じられない)、何より1号御料車の窓の天地幅が供奉車と同じになっているという、これまた致命的なミスを犯してしまっている。御料車の窓の天地幅は800mm以上あるのはずであり、供奉車の735mmよりも明らかに大きい。大体、何でこんな初歩的なミスが、あまつさえ完成品というある程度の数がで回るもので出てくるのか…。しかも、どの雑誌もそのミスに付いて触れてないあたり、なんともはやこの業界の行く末を思わず心配してしまう。そんな感じで、はっきり言って碌な製品に恵まれてこなかった御召列車に、やっとまともな製品といえるものを出してくれたのが、レボリューションファクトリーであった。シル・ヘッダー上のリベットは凹表現ではあるものの、ちゃんと供奉車のリベットもついており、しかも戦前の7両編成版で製品化という、なかなか心憎いことをしてくれた。値段的にも7両で15000円と、まぁ常識的な金額といえよう。しかも、1号編成のみならず2号・3号・14号までも製品化という、もはや感涙物のラインナップである。ただ、1号以外は「限定品」扱いっぽいが、まぁ、それもしかたないところか。ただ、このキットも決して完璧ではなく、供奉車460・461号の荷物ドアの折り曲げや御料車のドア部の組立など、やや不満の残る部分もある。とまれ、やっとまともな製品を出してくれたレボリューションファクトリーには敬意を表したい。あとは、KATOの新1号に期待、といったところであろうか。そして、重要な問題が一つ…。これは御召列車に限った話ではないが、TR73台車である。一応キングスから出ているものの、正直1300円の台車を買う気にはなれない。おまけに組み立てなければならないので調整が面倒くさい。KATOのTR73がベストなのだが、これはASSYパーツとしてほっとんど出回ってくれない。頼むから作ってくれ状態である。いや、売れるって、ホントに。KAOTさ〜〜〜〜ん!TR73、たくさん作ってぇ〜〜〜〜!
 というか、である。なんでここまでこの「御召列車」はかくも今まで恵まれてこなかったのであろうか…。

拾壱.郵便車 に戻る

車輌に戻る